本陣屋敷址と酛蔵
Historic mansion and brewery
当家は平戸のお殿さまが宿泊していた本陣屋敷でした
創業当初、潜龍酒造蔵主である山下家は、平戸松浦家のお殿さまの参勤交代や長崎港警備へ出向く際に平戸藩候専用の御旅舎として使われていました。現在もその屋敷趾(本陣屋敷趾/県指定史跡)が大切に保存されています。
敷地内には、御成門(おなりもん)、御成の間(枕水舎・ちんすいしゃ)があり、文政13年に十代藩主・松浦熈(ひろむ)公の意向を受けて大改築を行った当時のままの姿で受け継がれています。往時を偲ばせる江戸時代の道具や茶器などのほか、明治初期、ここで初めて電気が使えるようになったころに作られた松、イチョウの形の照明など、貴重な近現代の遺産も展示しています。
本陣屋敷に生き続ける、水の癒しとお殿さまの洒落心
御成門をくぐると正面に御成の間があります。お殿さまは下手にある通常の出入り口を通ることなく、お庭から直接、一段高い御成の間に上がられました。この本陣屋敷が、熈公より「枕水舎(ちんすいしゃ)」という名前をいただいている謂れは、柱が庭の池の水の中から建てられていて、座敷でお休みになると文字通り水を枕にしている形になるためです。きっと、ここで旅の疲れだけでなく、藩を背負うお立場にある日ごろの心身の疲れを、清らかな水で癒されたのでしょう。
また座ったまま眺めるように作られた庭園は、京都より庭師を招いて作らせたものです。築山の中腹からわき出した豊富な泉が滝となって流れ、美しい風景を作りだしています。「罷瀧(まがりだき)」と名付けられた滝は、この場所を愛した熈公の句にも詠まれています。
表庭の茶室に入る角のつくばいには 現在では珍しい水琴窟(すいきんくつ)があります。江戸~明治にかけて風流人に愛好された造園技術の最高傑作のひとつに数えられるもので、かなでられた水琴の涼しげな音が、遥かな歴史を感じさせてくれます。
枕水舎、罷瀧、水琴窟。
江戸や京の都から遠く離れた日本の西の端、平戸藩には、水を愛し水に癒された、洒落心のあるお殿さまがおいでになりました。江迎の本陣屋敷は、その心と平戸藩の歴史の一部を形として受け継いでいる江迎のまちの財産といえます。
創業時から変わらぬ酛蔵(長崎県指定有形文化財)
1688年に平戸松浦藩によって建てられた「酛蔵(もとくら)」。(県指定有形文化財)傘型の屋根組が特徴です。
2階まで1本柱(約7.5m)で支えられた、釘を全く使用していない組込み式の特殊な酒蔵造りです。このように作られた理由は、作業がし易いように、できるだけ空間を広く取るために考えられたものといわれています。
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